【左利きのエレン】狂気のデザイナー柳の生き方(※ネタバレ注意)

左利きのエレン

※今回の記事は漫画左利きのエレンの登場人物「柳一」の生き方を考える記事であり、多分なネタバレが含まれています。それでも問題ないよ、という方のみご覧ください。
漫画左利きのエレンを知らないという方は、心をえぐる仕事漫画「左利きのエレン」(※ネタバレ注意)を先に読むことをオススメします。

狂気のデザイナー:柳一

不謹慎で何が悪い
偽善も独善もバカよりええ

不謹慎で言うたら
堀越二郎も、フォン・ブラウンも…大概やん

作中では狂気を孕んだデザイナーとして描かれている「柳一」
上記のセリフは番外編での柳のセリフです。「名を上げるぞ」と行動を起こす場面ですね。
現在、連載中の番外編では、とうとう柳の全盛期が描かれるとのこと。
今後どのような活躍をするのか、とても楽しみですね。


さて、突然ですが「左利きのエレン」を読んだあなたに質問があります。
あなたは「柳一」のことをどう思いますか。
良い人だと思いますか。悪い人だと思いますか。

ただのブラック上司だろ!と言われれば、まぁその通りなのですが、柳の言葉に力がこもっているのも事実です。
柳は漫画の登場人物ではありますが、実際、彼と同じ思考回路を持ったデザイナーって案外いたりします。あそこまで苛烈ではありませんが…

今回は「左利きのエレン」の中でも賛否両論の登場人物「柳一」の生き方について考えてみたいと思います。

堀越二郎とフォン・ブラウン

柳の生き方について考える前に、柳が「大概」と評した堀越二郎フォン・ブラウンについて軽くご紹介します。
両者の人生は柳と接点があり、知っておくと柳の考えも見えてきます。

堀越二郎とヴェルナー・フォン・ブラウン

左が堀越二郎・右がヴェルナー・フォン・ブラウン

堀越二郎

堀越二郎は、ジブリの映画風立ちぬのモデルになった人物なので、知っている方も多いと思います。

堀越二郎と言えば零戦の設計者として有名ですね。
1903年6月22日群馬県藤岡市に生まれ、第一高等学校を経て東京帝国大学(現東京大学)工学部航空学科を首席で卒業。
三菱内燃機製造(現在の三菱重工業)に入社し、様々な飛行機の開発に携わっていきます。

堀越二郎が設計した「零式艦上戦闘機」いわゆる「零戦」は、第二次世界大戦時にアメリカ軍から「ゼロファイター」と呼ばれ、恐れられていました。
「零戦」は開発当初、その桁外れな航続距離と戦闘能力から世界最強と謳われていました。

ヴェルナー・フォン・ブラウン

フォン・ブラウンも堀越二郎と同時代に活躍した科学者です。

フォン・ブラウンは、ロケット技術開発黎明期からの第一人者でした。
第二次世界大戦中にはナチス・ドイツに協力する形でロケットの技術開発に励み、戦後はアメリカ合衆国に移住し、NASAに移籍。宇宙開発に多大な貢献をした人物です。

フォン・ブラウンというと有名なのはV2ロケットアポロ計画でしょう。
現在のロケット技術・宇宙開発技術に多大な貢献をした反面、第二次世界大戦・冷戦時に多くの人々を恐怖に陥れる兵器を開発した人物です。
そのため「アメリカ宇宙開発の父」とも称されていますが「悪魔に魂を売った博士」と非難されてもいます。

ちなみに、フォン・ブラウンは、第二次世界大戦時にナチスへ協力したことについて非難された際、このような弁明の言葉を残しています。

ナチズムには前から反対だった
宇宙にいく為なら悪魔に魂を売り渡してもよいと思った

戦争と科学技術の進歩

歴史が証明している通り、戦争によって科学技術は飛躍的に進歩します。

第一次世界大戦を例にあげてみますと、その進歩の早さを思い知ります。
それまでは「大砲による砲撃、次いで大軍での突撃」という戦法がよく用いられていましたが、第一次世界大戦の開戦から状況が一変しました。

機関銃・飛行機・毒ガス・戦車・地雷…等々の近・現代兵器が次々に登場し、戦略・戦術・戦法もすべて変わりました。
特に飛行機の進歩は目覚ましく、第一次世界大戦の影響で、技術力が格段に進歩しました。
開戦前は、ライト兄弟によって、やっと人類が空を飛べるようになった時代でした。
しかし、第一次世界大戦で本格的に飛行機が導入されたことにより、開発スピードが何倍にも引き上げられ、技術力が格段に向上したのです。


これらの兵器が登場したのは、科学者の研究によるものでした。
戦時、科学者は学問の探求よりも戦争への貢献を強いられました。

堀越二郎フォン・ブラウンも第二次世界大戦という激動の時代を生きた人物です。
両者の卓越した頭脳と技術力は、多くの国に計り知れない影響を及ぼしました。
それと同時に、両者とも多くの人を恐怖に陥れてきたのです。

柳の生き方

話が脱線しましたね。本題に戻ります。

柳は人に無関心なデザイナーと言えるでしょう。
もっと正確に言えば、デザインへの情熱があっても、人ヘの関心はないタイプの人間です。
先程の科学者2名、特にフォン・ブラウンと柳は似ていますね。

柳という人物

人に無関心なデザイナーとは、自分が作ったデザインがどのように人々を幸せにするかということよりも、自分の作ったデザインが大好き、それに伴う富や名声が大好きな人間です。
デザイナーというよりかはアーティストに多いタイプですね。

アーティストであれば、作品は結局のところ自己満足ですので、作って終わりでも良いのですが、ことデザイナーに関してはそうはいきません。
どれほど見た目が良くとも、使いにくかったり、分かりづらかったり…と、ユーザーの事を考えられていないデザインは何の意味もありません。

しかし、柳には俺の作るデザインはすごい。理解できないのは理解できない人間の方が悪いという姿勢が感じられます。
なまじ柳のデザイン力が並外れているだけに、この姿勢がまかり通っているのです。


また、本編でも言及されていましたが、彼は自分が考える至高のデザインを作るためであれば、たとえクライアントであっても従えようとします。

基本的にデザインの仕事はチームで動きます。
デザイナー当人だけでなく、営業をはじめ、共に働く制作会社やカメラマン、イラストレーター、印刷所、そしてクライアントまで…様々な人を巻き込んで協力しあい、たまにぶつかり合いながら…デザインを完成させます。本来は。

柳は違います。

柳はデザインに関わる全ての人間を従えようとします。
たとえクライアントの意見であってもねじ伏せます。
多少荒々しいやり方でも最高のデザインを作ることができれば問題なしという考えがあるからです。
柳が自分自身のデザインについて、このように言っています。

ぼくのデザインはフォアグラや

作り方がエグくても
出来上がった料理は最高にうまい

良いデザインを作るためには、犠牲をいとわない・手段を選ばない。
それが柳流デザインです。
この考えはナチスに協力したフォン・ブラウンの考え方に近いですね。

デザインへの情熱と狂気

柳の言動は目にあまるものがありますが、歴史が証明しているように、狂気じみた情熱は技術を飛躍的に進歩させます。
時代の流れやニーズが合っていれば尚更です。
堀越二郎もフォン・ブラウンも、その卓越した頭脳と技術力が、時代のニーズとマッチングしたことによって、歴史に名を残しました。

仮にフォン・ブラウンがこの世に生まれていなかったとしたら…大戦がなかったとしたら…ロケット技術・宇宙開発技術は、現在の水準まで発達しなかったでしょう。
現在の技術力はフォン・ブラウンあってのモノです。行為の善悪は置いてくとして


番外編の時代は東日本大震災が発生した2011年、そして柳の全盛期。
能力と時代のニーズがマッチした今、柳は堀越二郎やフォン・ブラウンよろしく大活躍するのでしょう。
それもデザイン界に名を残すような。

彼のつくったデザインが実際にユーザーを助けるかどうかは別として…

柳の生き方は天才にだけ許された生き方

当たり前ですが、今のご時世、柳のような仕事をやっていたら一発でアウトです。
普通の会社であれば、当然処分されます。それができないのは柳のデザイン力が高いためです。それと広告業界の闇…うわ、何をs………

まぁ、あくまで漫画の登場人物の話なので、柳を真似る人物などいないとは思いますが、社内・社外に多くの敵を作る柳のやり方は、社会人として致命的にアウトです。
広告業界って意外と狭いですからね。
確実に誰からも相手にされなくなってしまいますよ。

こういった破天荒な(言い換えると横暴な)働き方は、スティーブ・ジョブズのような天才のみができる働き方です。
ジョブズは
秘書がいつもと違うブランドのミネラルウォーターを持ってきたためクビにしたり…
社員のiPhoneを前触れなく取り上げて、そのiPhoneがパスワードで保護されていなかったらクビにしたり…
と、知的なイメージとはかけ離れた行動もしています。

それでも、なおアップルのトップに居座ることができたのは、天才であったから解雇するメリットよりも雇用するメリットのほうが大きかったからです。
普通の凡人社員がやったら、普通にアウトです。

柳の生き方は天才にだけ許された生き方です。
柳は天才キャラではないので、この生き方でいつまで保つのでしょうか…?

まとめ

この記事のまとめ
・柳は人に無関心なデザイナー
・柳の言動は許されないが、柳のような人物は技術を飛躍的に進歩させてきた歴史がある。
・柳の生き方は天才の生き方です。真似しないように。

いや〜、それにしても私の上司が柳のようなサディストでなくてよかったです。
絶対、速攻で潰れていたでしょうね(笑)

どうでもいいけど、最新話の柳が亜人の田中に似ている…