心をえぐる仕事漫画「左利きのエレン」(※ネタバレ注意)

左利きのエレン

「左利きのエレン」って?

もともとはWeb漫画ですが、徐々に人気が出てコミックスにもなって販売されている「左利きのエレン

以前「やる気」で仕事はできない。の記事でもチラッと紹介しましたね。

左利きのエレン-あらすじ
天才になれなかったすべての人へーー。
朝倉光一は、大手広告代理店に勤める駆け出しのデザイナー。
いつか有名になることを夢みてがむしゃらに働く毎日だが……。

この導入文から始まる「左利きのエレン」は、主人公の朝倉光一がデザイナーとして、社会人として奮闘する漫画です。

これでもか!ってほどのリアルな描写

「デザイナー」という職業ほど、イメージと実態がかけ離れている職業はないと思います。

一般的な「デザイナー」のイメージは…
華やかなオフィスで優雅にコーヒーを飲み、知的でクリエイティブな作品を作り上げる…
そんな感じだと思います。

残念ながら、実態は違います。
クライアントは神様。どんな理不尽な修正でも対応しなければならない。
OKがでなければ、終電 or 会社に泊まり込みも当たり前。
一見して分からないような細部のミリ単位の調整もキッッッチリと寸分の違いなく、こなさなければならない…

デザイナーはアーティストとは違います。
自由奔放に作品を作れるわけではないのです。デザイナーは会社員。サラリーマンです。
利益のために働かなければいけません。

電通の一件もあり、最近になってやっと労働環境が改善されつつありますが、この業界のほとんどは旧態依然としており、労働基準法なぞどこ吹く風ぞ。といった感じです。
ぶっちゃけデザイン業界ってけっこうブラックです。
うちの会社もそうですが…。


少々脱線してしまいましたね。
左利きのエレンでは上記のデザイナーの仕事ぶりをこれでもか!ってほどのリアルに描き出します。

よく業界人がこの漫画を見て「胃が痛くなる」といった感想を述べていますが、その理由は漫画の登場人物達に降りかかる理不尽が、仕事のトラウマを思い出させるからでしょうね(笑)

左利きのエレンの魅力は登場人物の本気さ

左利きのエレンの魅力はいろいろありますが、最も魅力的なのは登場人物の全員が本気で生きて仕事をしている、そして、その生き様・仕事っぷりを見事に描ききっている点だと思います。

登場人物それぞれが、才能や生い立ち、背景や利害関係、運命に翻弄されながら、必死に生きているの姿が読者に共感を呼び起こしています。

せっかくなので、ここで私の好きな左利きのエレンの登場人物を紹介したいと思います。
私自身デザイナーなので、目黒広告社に務める人達を中心に紹介していきます。

非凡な凡人:朝倉光一

何か…!!!
何かにならなきゃ…
退屈で…
退屈で…生きていけねぇよ…

左利きのエレンの主人公、朝倉光一です。
どうしようもないところもありますが、なんだかんだ応援したくなるキャラクターです。

このキャラクターの魅力は、仕事の壁・理不尽に全力で立ち向かっているところにあります。
光一のぶつかる壁や悩みは、現実のデザイナーがぶつかる壁と遜色ありません。
その壁に全力で立ち向かって、折れそうになりながらも生きている様が泣けます。本当に。

高校時代の光一のセリフに「何かにならなきゃ…退屈で…生きていけねぇよ…」というのがあります。このセリフを読んだ誰もが、光一の想いに共感したのではないでしょうか。

自分が特別でない普通の人間であるなんて認めたくない。この世界の主人公でいたい。
しかし、自分の才能のなさ・実力のなさ…残酷な現実に追いつかれそうになる…

なんとも人間らしい葛藤ですね。

私は、最初から最後まで人間らしい生き方をする光一が作中で一番好きですね!

デザインの雄:神谷雄介

万全なんて一生こねぇぞ

2日寝てなくても
友達に裏切られても
女にフラれても
その中で歯くいしばってひねり出した仕事が
お前の実力の全てだ

クソみたいな日に、いいもんつくるのがプロだ。

このセリフは、以前に下記の記事で紹介しましたね。
> 「やる気」で仕事はできない。

作中では、いわゆる”キテる”デザイナーで、光一の上司として登場しました。
作中では光一の師匠として活躍するのですが、そんな神谷も学生時代は傲慢な生徒だったようです。

自分で作品を作れないのは怠慢だ。他人の力を借りずに、己のセンスで良い作品を作り上げる。
そんな信念を持っていた学生時代の神谷は、先輩の卒業制作を共同制作として手伝ったことでチームとしての働くことの大切さを学びました。

美大の人間って、意外と神谷のような考えをした人間は多いです。
自分の世界を大事にし、唯我独尊で作品を作り上げる。心意気は見事ですが、排他的でもあるんですよね。

飛ぶ鳥落とす勢いの”キテる”デザイナーとして描かれる神谷にも、こういった過去があると知ると親近感が湧いていきますね。

左利きのエレンの良心:流川俊

だったら、
サラリーマンやれよ。

人気投票でNo.1の流川さん。
流川は、元々はコピーライターを目指して、広告会社に入ったものの、営業に配属となります。
営業からクリエイティブへの異動を目指して、必死にコピーライトを書きますが、ついにコピーライターになることは叶いませんでした。
しかし、そこから様々な苦悩を経て、コピーライターとしてではなく、”営業”として会社を上り詰めていく人物です。
光一と敵対するような形で初登場し、営業 VS デザイナーの構図が描かれました。

営業であるがゆえに、デザイナーと厳しいぶつかり合いをする…お互い譲れないモノがあるからこそ全力でぶつかり合う。
そんな流川の働きっぷりには感動を覚えます。
私はデザイナーなので、営業の仕事を普段意識することがないのですが、こういった葛藤や気持ちを持っているのだなと、まざまざと見せつけられました。
こういった人と仕事をしてみたいです。

流川は「左利きのエレン」の良心ですね。
個人的に、もっと流川と光一の絡みを見てみたいですね。この二人なら作れない広告は無いでしょう。

まとめ

いやぁ〜、本当こういう漫画はやめてほしい!(褒め言葉)
続きを読みたい気持ちはあるのだけども、読めば読むほど、胃が痛くなっていく…。

それくらい心に刺さる漫画です。左利きのエレンは。
デザイナーにとっては劇薬です。

それと一つ思うに、作者であるかっぴーさんは、実際に光一と同じ経験をしたからこそ、こんな恐ろしくもおもしろい漫画を描けるんだろうなぁ、と。

漫画でも映像でも小説でも、人間は自分の知らないことをリアルに描くことなんてできませんからね。
漫画の中で描かれている理不尽はフィクションではなく、本当にあったことなのだ、と思うと、またさらに胃が痛くなります…


最後ですが、左利きのエレンの本編は連載終了していますが、現在は番外編が連載されています。

まだまだ光一たちの活躍が見れるのは嬉しいですね!これからの展開に注目です。

左利きのエレンは、アマゾンでも販売されています。
左利きのエレン[Kindle版] 1巻 左ききのエレン(ジャンプコミックス) 1巻

リンク貼っておいてなんですが、アマゾンで購入するよりかは、cakesの会員になって読んだほうが金銭的に良いかもしれません(笑)


最近、こんな記事を書いてみました。
左利きのエレンの作中での出来事や登場人物のセリフからデザイン業界・広告業界を私なりに分析する記事です。
> 左利きのエレンから見るデザイン業界の闇(※ネタバレ注意)